コンビニに向かう途中、路面にホースで水を撒いているおばさんがいた。
よそ見をしていて、こちらに気付いていない。
嫌な予感・・・
ホースの口がこちらに向けられた!
と同時に水が急カーブを描きながらこちらへ向かってきた!
やばいっ!
そう思うより先に体が反応していた!
鍛え抜かれた体と人並み外れた身体能力により、気が付いたときには後ろ宙返りをしていた!
と言いたいところだが実際には上体が後ろにちょっとのけぞっただけだった。
卓越された反射神経のおかげで、なんとか水は足にかけられただけで済んだ。
水撒きをしていたおばさんは、「まぁステキ!なんて素早い身のこなしなのっ!」と言いながら恍惚とした目でこちらを見てきた。
と思ったら「あら、ごめんなさぁい。」と一瞥くれて軽くあしらわれただけだった。
まぁいい。靴を洗ったと思えばいい。
こんなことでいちいちイライラしていられない。
苛立ちは脳に悪影響を与える、と昨夜読んだ本で茂木健一郎が言っていたではないか。
夜、皿洗いをしていたら鍋のガラス蓋が手から滑り落ちた!
ふふ、ばかやろう。そのまま床に落下できると思うなよ。
オレの反射神経を甘くみるんじゃねえ!
そう思うより先に体が反応していた!
鍛え抜かれた体と人並み外れた身体能力により、気が付いたときには手を伸ばしていた!
が、間に合わず思わずひざを上げて腿(もも)の上に乗せようとした!
ナイスアイデア!
手が届かなくてもまだ足という武器があったのだ!
たとえ腿の上に乗らないにしても、手元から直接落ちるよりも腿でワンクッションおいてから床に落ちるとなれば、床までの距離はおよそ半分になる。しかも下にはキッチンマットが敷いてあるから、ガラス蓋の強度と落下速度とサインコサインタンジェントとフレミングの定理で計算したところ、割れることはまず無いのだ!
しかし誰しもが予想しないことが起きた!
手元から落ちたガラス蓋は、僕に膝蹴りをされた状況となり更に速度を増して、台所の床どころか玄関に向かって飛んでいった!
儚くも玄関のコンクリートに飛び込んでいくガラス蓋を見つめながら、今日までのガラス蓋との思い出が走馬灯のように脳裏に甦った。
そして、
割れた・・・。